大野威研究室

最近気になったことを不定期で書いています。

ヨーロッパでEV販売が急増

 ヨーロッパでは、販売助成金の削減(ドイツ)などでEV販売が足踏みしているという印象が一部で持たれているが、EVの販売比率は着実に上昇を続けている。

 オートモーティブニュースによれば、2026年8月の新車販売に占めるEVの割合は、フランス38%、ドイツ32.4%、イギリス29.8%。フランスとドイツは1年前にはこの比率がともに約19%だったので、EV販売がここにきて急増していることがわかる。

 ちなみにフランスはEV購入者に最高7,700ユーロ(約140万円:1ユーロ=180円で計算)の助成金を支給するほか、低所得者には140ユーロ(2.5万円)から220ユーロ(4万円)でEVをリースできるプログラムを提供している。このプログラムは2026年7月16日から始まったもので5万台以上をリースできる4.01億ユーロ(720億円)の予算が用意されている。ドイツでも2026年5月から最高6,000ユーロ(約110万円)の補助金の支給がはじまった。

 世界でもっともEV普及が進んでいるとされる北欧諸国でのEV販売シェアはもっと高く、ノルウェー98%、デンマーク80%、フィンランド53%、オランダ47%、ベルギーとスウェーデンともに43%となっている。

 下の図は、ヨーロッパにおけるメーカー別販売台数の推移。トヨタを除く日本車メーカーが苦戦を強いられている様子が示されている。最近、日産自動車はイギリスのサザーランド工場の半分を中国メーカーに貸し出すかどうか交渉をはじめたとも伝えられている。ヨーロッパでいまの調子でEVシェアが上昇していくなら、売れ筋のEVをもたない日本車メーカーにとっては厳しい状況が続きそうだ。

 

データ出所:欧州自動車工業会

 

 下の図はヨーロッパにおけるアジア系自動車メーカーの販売台数の推移。長期的にみるとトヨタ以外の日本メーカーは横ばいか減少となっている(日産・三菱、マツダ、ホンダはピーク時からほぼ半減)。販売を増加させている韓国の現代・起亜、中国メーカー(上海汽車、BYD)と対照的な動きとなっている。

データ出所:同上

 

 

 

日本の長期金利が欧米の水準に急接近

 長い間、0%付近にとどまっていた日本の国債10年金利が一時的に3%を超え、欧米の水準に急接近している。

 現在、世界的な金利の上昇とくに長期金利の上昇が大きな話題になっているが、下のグラフで明らかなように日本の長期金利の上昇はそのなかでもきわだっている。 

 

データ出所:各国中銀

フランス、最低賃金(SMIC)を2277円に引き上げ

 2026年6月1日、フランスは最低賃金を2.41%引き上げ12.31ユーロ(2277円:1ユーロ=185円で計算)とした。なおフランスは今年1月にも最低賃金を引き上げており、今回は今年2回目の最賃引き上げになる(合わせて約3.5%の引上げ)。

 

 

大林組が豪マルチプレックスを約860億円で買収

 2026年6月18日、大林組は同業の豪マルチプレックス約860億円で買収すると発表した。

 大林組の資料によれば、マルチプレックスの業績は次のようになっている。

 

  2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上 約4800億円 約6160億円 約6080億円
親会社帰属純利益 約80億円 約430億円の損失 約131億円

 

 2025年3月期の純利益131億円を使うとPERは6.56と好取組にみえる(アドバイザリー費用22億円も含めるとPERは約7.9)。

 なおマルチプレックスは2024年12月期に約430億円の損失を出している。メディアではブリスベンの大型複合開発でコロナ、悪天候、たびかなさる設計変更のために出た損失だとされている。同社は、過去に英ウェンブリー・スタジアムの工事でも大きな損失を出している。買収の成否は、大林組がマルチプレックスの大型工事の採算管理をしっかりできるかどうかに大きくかかっているように思われる。買収の行方を引き続き注意して見ていきたい。

海外投資家の株保有比率が上昇:株主ファーストに拍車

 海外投資家の株所有比率が上がり、株主ファーストの傾向に拍車がかかっている。

 2025年3月末時点で、日本の株式の32.4%を海外投資家が所有している。2003年3月末における海外投資家の株保有比率は17.7%だったので、20年でほぼ倍増したことになる。このペースで増加が続くと、あと20年余で日本の株式の過半数を海外投資家が保有することになる。

 個別企業に注目すると、これを先取りした動きがみえてくる。

 ひとつはキオクシア。最近、キオクシアの株の時価総額が一時トヨタを抜いたと話題になったが、2026年3月末の海外投資家の保有比率は68%。これには、海外投資家が投資信託経由で保有する分がすべては含まれていないので、実際はもう少し高いと推測される。4月以降、この割合はさらに高くなっていると推察される。急上昇している45兆円ちかい時価総額の大半は海外投資家の所有するものとなっている。

 最近、なにかとニュースになる塗料。塗料大手の日本ペイントは、日本と名前がついてはいるが実際にはシンガポールのウテラム(Wuthelam Holdings)が株式の55.54%を所有する同社の傘下企業。同社を含め株式の81.22%を外国人投資家が所有している。同社は、2026年3月19日からシンナーの価格を75%値上げしている。関西ペイントも、外国人投資家比率が40.5%。関西ペイントも、2026年4月13日出荷分からシンナー製品を50%以上値上げし、出荷数量の制限もはじめた。株主ファーストの傾向が強まる中、海外投資家が多数を占める会社で、株主の利益を犠牲にすることになっても国民生活に配慮して値上げを踏みとどまるという選択はとうぜん取れなかったと思われる。政府は、海外からの投資が少ない、それをこれから増やしていく必要があるという立場なので、これからこういうことがさらに増えていくに違いない。

 ちなみに、資本取引の国際化が日本より進んでいるとされるアメリカ。米財務省によれば、2024年6月末時点での外国人の株保有比率は約21%、この十年あまり変化していない。

 

2026年7月6日追記

 東京証券取引所は、2025年度(2025年4月~2026年3月)、海外投資家の保有比率は前年度から2.3%増加して34.7%となったことを明らかにした。海外投資家比率は1/3を超えることになる。このペースで上昇が続くと、あと7年で海外投資家比率が過半数を超えることになる。

 

 

オキサイド、イスラエル子会社撤退などで約25億円の特別損失を計上

 2026年1月14日のブログで、光学系部品メーカーのオキサイドが、2023年3月にイスラエルの光学結晶メーカーのライコル・クリスタルズPER100倍以上の高値34億円で買収したが、その業績が思わしくないことを記した。2026年2月期決算で、オキサイドはライコル・クリスタルズから全面撤退し約25億円の特別損失を計上したことが明らかになった。

 2026年5月22日に公開された有価証券報告書(2026年2月期)によれば、オキサイドはライコル・クリスタルズの全株式と貸付債権を譲渡(全面撤退)。これを主要因として24億9800万円の特別損失が発生した。この結果、経常利益は6.74億円の黒字でありながら、親会社に帰属する当期純利益は5.38億円の赤字に沈んだ。ただライコル・クリスタルズの重荷がなくなったため来期以降は純利益の黒字化が予想されている。

 

 

オーストラリア、最低賃金を26.44AUドル(約3015円)に6%引上げ

 2026年6月1日、オーストラリアで最低賃金の審議をおこなっていた公正労働委員会(Fair Work Commission)は、2026年7月1日から最低賃金を24.95AUドル(約2845円:1AUドル=114円で計算)から26.44AUドル(約3015円)約6%引き上げることを決定した。オーストラリアの2026年4月のインフレ率(CPI)は年率4.2%。これを大きく上回る引上げとなる。

 日本でも最低賃金の引き上げが続いているが、他の先進国でも最低賃金の大幅引き上げが続いているのと為替レートが円安傾向にあるため、2-3倍近くまで開いた格差はなかなか縮まりそうにない。日本では、経済団体を中心に最低賃金の大幅な引き上げに慎重な意見が増えている印象だが、今年の最低賃金の引き上げ率が前年並みを維持できるかどうか注目される。